院試過去問 2006年度専門科目数理のバックアップ(No.3)

院試勉強会

http://www.i.u-tokyo.ac.jp/edu/course/mi/admission.shtml
http://www.i.u-tokyo.ac.jp/edu/course/mi/pdf/2006suuri-j.pdf

第一問
正方行列を以下のように定義する．
- (1)が偶数ならば，は逆行列を持たないことを示せ．
  - が偶数ならば，
    $\begin{align*}\begin{pmatrix}1&1&0&\dots&0\\0&1&1&\ddots&\vdots\\\vdots&\ddots&\ddots&\ddots&0\\0&&\ddots&1&1\\1&0&\dots&0&1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}1\\-1\\\vdots\\1\\-1\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}0\\0\\\vdots\\0\\0\end{pmatrix}\end{align*}$
    より逆行列を持たない．
- (2)が奇数ならば，の列ベクトルの集合は線型独立であることを示せ．
  - ．が3以上の奇数のとき，
    $\begin{align*}|C_{n}|&=\left|\begin{matrix}1&1&0&\dots&0\\0&1&1&\ddots&\vdots\\\vdots&\ddots&\ddots&\ddots&0\\0&&\ddots&1&1\\1&0&\dots&0&1\end{matrix}\right|\\&=\left|\begin{matrix}1&1&&&\\&1&1&&\\&&\ddots&\ddots&\\&&&1&1\\&&&&1\end{matrix}\right|+\left|\begin{matrix}1&&&&\\1&1&&&\\&\ddots&\ddots&&\\&&1&1&\\&&&1&1\end{matrix}\right|=2\end{align*}$
    よって，線型独立である．
- (3)が逆行列を持つならば, は整数行列であることを示せ．
  - は整数行列なので，余因子行列 $\tilde{C}_n$ も整数行列．(1),(2)より逆行列を持つならばは奇数でありであるので，逆行列の2倍 $2C_n^{-1}=2\tilde{C}_n/|C_n|$ は整数行列．
- (4)無向グラフの枝の部分集合で，対応するの列ベクトルの集合がの基底となっているものをすべて挙げよ．
  - (1)(2)より全域木に1本付け加えて奇数ループを一つつくればよい．よって，
    $\{e_1,e_2,e_3,e_4,e_5\},\{e_1,e_2,e_3,e_4,e_6\},\{e_1,e_2,e_3,e_5,e_6\},\{e_1,e_2,e_4,e_5,e_6\}$
    の4通り．

第2問
- 実数の組からなるデータに対してを最小2乗法で当てはめることにより，の推定量を求める．ここで，
  
  とおく．ただし，の階数は2であるものとする．このとき，を求めよ．また，
  
  を満たす，により決まる行列を求め，が成立することを示せ．
  - $e=(\bm{y}-X\hat{\bm{\beta}})^{\top}(\bm{y}-X\hat{\bm{\beta}})$ とおくと， $\hat{\beta}_1,\hat{\beta}_2$ はを最小化するようなものなので，
    $\begin{align*}\frac{\partial e}{\partial \hat{\beta}_1}&=\sum_{i}2x_i(y_i-x_i\hat{\beta}_i-\hat{\beta}_2)=0\\\frac{\partial e}{\partial \hat{\beta}_2}&=\sum_{i}2(y_i-x_i\hat{\beta}_i-\hat{\beta}_2)=0\end{align*}$
    が成立する．この連立方程式を解けば，
    $\begin{align*}\hat{\beta}_1&=\frac{n\sum_{i=1}^n x_iy_i-(\sum_{i=1}^n x_i)(\sum_{i=1}^n y_i)}{n\sum_{i=1}^n x_i^2-(\sum_{i=1}^n x_i)^2},\\\hat{\beta_2}&=\frac{(\sum_{i=1}^nx_i^2)(\sum_{i=1}^n y_i)-(\sum_{i=1}^n x_iy_i)(\sum_{i=1}^n x_i)}{n\sum_{i=1}^n x_i^2-(\sum_{i=1}^n x_i)^2}.\end{align*}$
    これより，
    $\begin{align*}P_{ij}=\frac{nx_ix_j-(\sum_{k=1}^n x_k)(x_i+x_j)+\sum_{k=1}^n x_k^2}{n\sum_{k=1}^n x_k^2-(\sum_{k=1}^n x_k)^2}\end{align*}$
    $P_{ij}=P_{ji}$ は明らか．
    $(P^2)_{ij}=\sum_{k=0}^n P_{ik}P_{kj}=P_{ij}$ より．
    
    このように解くとの計算で死ぬことになるので擬似逆行列を使ってきれいに解くべき．
    $e=|y-X\hat{\beta}|^2$ を最小化するのは， $\nabla e=X^{\top}(\bm{y}-X\hat{\beta})=0$ の時．すなわち， $X^{\top}\bm{y}=X^{\top}X\hat{\bm{\beta}}$ ， $\hat{\bm{\beta}}=(X^{\top}X)^{-1}X^{\top}y$ ．
    さらに左からを掛けると， $X\hat{\beta}=X(X^{\top}X)^{-1}X^{\top}\bm{y}$ となるので， $P=X(X^{\top}X)^{-1}X^{\top}$ ．
    これより， $P^2=X(X^{\top}X)^{-1}X^{\top}X(X^{\top}X)^{-1}X^{\top}=X(X^{\top}X)^{-1}X^{\top}=P$ ，
    $P^{\top}={X(X^{\top}X)^{-1}X^{\top}}^{\top}=(X^{\top})^{\top}((X^{\top}X)^{-1})^{\top}X^{\top}=X(X^{\top}X)^{-1}X^{\top}=P$ ．
- (2)(1)で考えた実数の組からなるデータに，2次曲線を最小2乗法で当てはめることによりの推定量を求める．ここで，
  
  とおく．ただし，の階数は3であるものとする．このとき，
  
  を満たすにより決まる行列と(1)で求めたに関して，
  
  が成立することを示せ．
  - (1)と同様の議論により，
    $Q=Z(Z^{\top}Z)^{-1}Z^{\top}$
    である．ここで， $X=Z\begin{pmatrix}0&0&0\\1&1&1\\1&1&1\end{pmatrix}$ であるから，
    $\begin{align*}PQ&=X(X^{top}X)^{-1}X^{\top}Z(Z^{\top}Z)^{-1}Z^{\top}\\&=X(X^{top}X)^{-1}\begin{pmatrix}0&1&1\\0&1&1\\0&1&1\end{pmatrix}Z^{\top}Z(Z^{\top}Z)^{-1}Z^{\top}\\&=X(X^{top}X)^{-1}\begin{pmatrix}0&1&1\\0&1&1\\0&1&1\end{pmatrix}Z^{\top}\\&=X(X^{top}X)^{-1}X^{\top}=P\end{align*}$
    また， $P=P^{\top}=(PQ)^{\top}=Q^{\top}P^{\top}=QP$ ．
- (3) (1)で考えた実数の組からなるデータに対して, が互いに独立で，各が平均，分散の正規分布に従うモデルを仮定する．未知のパラメータの最尤推定量をとおく．このとき，と(1)のに関して，
  
  が成立することを示せ．
  - 誤差の尤度は
    $\begin{align*}L=\prod_{i=1}^n\frac{1}{\sqrt{2\pi\sigma^2}}e^{-\frac{(y_i-\hat{b}_1x_i-\hat{b}_2)}{2\sigma^2}}\end{align*}$
    であり，対数をとると，
    $\begin{align*}\log L=\sum_{i=1}^n\log \frac{1}{\sqrt{2\pi\sigma^2}}e^{-\frac{(y_i-\hat{b}_1x_i-\hat{b}_2)^2}{2\sigma^2}}=\frac{n}{\sqrt{2\pi\sigma^2}}-\sum_{i=1}^n\frac{(y_i-\hat{b}_1x-\hat{b}_2)^2}{2\sigma^2}\end{align*}$
    $\hat{b}_1,\hat{b}_2$ で微分すると，
    $\begin{align*}\sum_{i=1}^n(y_i-\hat{b}_1x-\hat{b}_2)&=0\\\sum_{i=1}^n x_1(y_i-\hat{b}_1x-\hat{b}_2)&=0\end{align*}$
    と(1)と同じ式が出てくるので， $\hat{b}_1=\hat{\beta}_1,\ \hat{b}_2=\hat{\beta}_2$ が成立する．
- (4)応用統計学の復習をせよ．
第3問
xy-平面状の2点から2種類の決勝が同時に成長を始めた．からの成長は速さ1，からの成長は速さで，どちらも成長は等方的である．二つの結晶の成長はぶつかったところで止まり，速く成長する結晶はもう一方の結晶の外側を回り込んで成長することになる．十分な時間が経った後の二つの結晶の境界の極座標表示をとする．
- (1)の領域にできる境界曲線が満たす方程式を求めよ．
  - 3平方の定理より
    $kr(\theta)=\sqrt{(a-r(\theta)\cos\theta)^2+(r(\theta)\sin\theta})^2$
    であるから，
    $r(\theta)=\frac{-\cos\theta+\sqrt{\cos^2\theta+a^2(k^2-1)}}{k^2-1}.$
- (2)極座標表示された一般の曲線のの範囲の長さを表す積分表示式を示せ．
  - $\int_{\theta_1}^{\theta_2}r(\theta)d\theta$
- (3)の領域において，が満たす方程式を求めよ．
  - $kr(\theta)=a\sqrt{\frac{k^2}{k^2-1}}+\int_{\pi/2}^{\theta}r(\theta)d\theta$
- (4)の形の関数で， (3)で求めた方程式を満たすものを求めよ．
  - (3)の式に代入して
    $kr(\theta)=a\sqrt{\frac{k^2}{k^2-1}}+\frac{\alpha e^{\beta\theta}}{\beta}-\frac{\alpha e^{\beta\pi/2}}{\beta}.$
    これを解くと
    $\alpha=\frac{ae^{\pi\beta/2}}{\sqrt{k^2-1}},\ \beta=\frac{1}{k}.$

第4問

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