[[講義日程-2007年度冬学期]] - 講義 http://hagi.k.u-tokyo.ac.jp/~mio/note/dmm/501070.html - 変形体の力学。へんたいけいのりきがく -- [[講義ページ>http://hagi.k.u-tokyo.ac.jp/~mio/note/dmm/501070.html]] -- 出席 (10%) -- 演習 (20%) -- 試験、紙媒体持ち込み可 (70%) -- 教科書 11月23日休講 11月30日演習(平方根の計算ができる電卓を持参すること) - 連続体 -- 連続体とは -- 応力 -- 保存則 -- 運動方程式 - 弾性体 -- 弾性変形 -- ひずみ -- フックの法則 -- つりあいの方程式 -- 均等変形 -- 棒の曲げ -- 棒のねじれ -- 弾性振動 -- 粘弾性 - 流体 -- 流体の性質 -- 完全流体とオイラー方程式 -- 渦と循環 -- 渦なしの流れと速度ポテンシャル -- ベルヌーイの定理 -- 2次元流と複素速度ポテンシャル -- 粘性流体とナビエ・ストークス方程式 -- 1次元流 -- 流体中の波動 - 変形体・連続体 -- 通常の物体には大きさがあり、変形する。 --- 固体:外力がなければ形を保つ。微小な外力に対して、線形に変形する。弾性体。 --- 液体・気体:それ自身には形はない。小さな力に対しても大きな変形をする。流体。 -- 変形体は無限の自由度を持つと見なせる。 -- cf)剛体:大きさはあるが変形しない。自由度6 - 連続体 -- 質点:質量を持つが大きさを持たない。自由度3。~~質点の運動方程式、m(d/dt)^2 ''r'' = ''F''(t,''r'')で記述される。 -- 質点系:質点の集まり。自由度3n。~~それぞれの質点について運動方程式が成り立つ。~~質点間の相互作用があり、多くは解析的には解けない。 -- 現実の物体は10^23のオーダーで質点が集まっていると見なせるが、~~一つ一つの質点の振る舞いは把握できないし、解けない。~~個別の質点を見るのではなく、巨視的・平均的な振る舞いがわかれば十分。~~物体を質点の集まりではなく、空間中に連続的に質量が分布した''連続体''とみなす。 -- 例)密度:単位体積あたりの質量~~現実の物体に対しては、巨視的には十分小さく、微視的には十分大きい体積中で、密度の平均を取る。~~圧力・温度など、微視的に意味がない物理量も、ある程度小さい体積中の平均を考える。 - 連続体に働く力 -- 連続体の微小な一部分を取り出して、そこに働く力を考える。 --- 体積力:微小部分全体に働く力。体積に比例。 --- 応力:境界面を通して働く力。境界面の体積について線形に働く。 - 体積力` -- 連続体を構成する物質に直接働く力。~~重力・電磁気力。プラズマ以外では主に重力。~~単位体積あたりに働く力''K''を使って、d''F'' = ''K''dV, ''K'' = ρ''g''と表現。~~保存力として扱うなら、''K'' = -ρgradλ - 応力 -- 連続体の構成要素の間に働く力。連続体内に取った微小直方体の6面それぞれについて考える。~~微小面については面積に比例する大きさになる。 -- 力の働く面の向きと面積から、線形に力のベクトルが一つ定まる。~~各面について t[i,j]dS[j] と表現可能。~~全ての面について足し合わせれば、(ガウスの定理を使って)合力は F[i]dV = ∂[j]t[i,j]dV の形~~(二重添え字は和を取る。∂[i] = ∂/∂x[i])~~このtが応力テンソル。対称行列で、独立な成分は6個。 -- 微小体積に境界面を通して働く力の密度は ''F'' = ∂[j]t[i,j]''e''[i] -- 巨視的領域に働く応力の合力は、微小要素に働く応力の総和。表面全体にわたって積分すればいい。~~ガウスの定理を使えば、体積分に直すこともできる。~~F[i] = ∫[∂Ω]t[i,j]dS[j] = ∫[Ω]∂[j]t[i,j]dV ---- - 応力テンソル:t[i,j],j方向の面素ベクトルに働く面積あたりの力のi成分。 -- 法線ベクトル n[i]を持つ面に働く面積当たりの力は t[i,j]n[j] - アインシュタインの縮約規則 -- ベクトル・テンソル等、添え字を持つ量について、一つの項に同じ添え字が二階出てきたら~~その項はその添え字について和を取ったものを表すとする。~~a[i,i]は対角成分を表すこともあるので個別対応。 - 完全反対称テンソル -- ε[i,j,k]~~ε[1,2,3] = 1~~各添え字に対して反対称 -- 実際には擬テンソル。向き付けの変わる変換に対して符合が変わる。~~n次元多様体での(n-1)次形式の基底。~~(A×B)[i] = ε[i,j,k]A[j]B[k] - 応力のモーメント -- ∫[Ω]ε[i,j,k]x[j]∂[l]t[k,l]dV~~= ∫[Ω]{ε[i,j,k]∂[l](x[j]t[k,l]) - ε[i,j,k]t[k,j]}dV~~= ∫[∂Ω]{ε[i,j,k]x[j]t[k,l]dS[l] - ∫[Ω]ε[i,j,k]t[k,j]}dV -- 応力テンソルは表面を通して働く力だから、応力のモーメントも表面積分だけで書ける必要がある。~~これは局所的なモーメントが0になり、tが対称テンソルになることを導く。 - 連続体の運動 -- 連続体を小さな領域に分けて、その小領域が一体となって運動するとみなし、質点のように扱う。~~流体の構成要素を追跡する立場。~~(d/dt)^2 mx[i] = (k[i]+∂[j]t[i,j])dV~~ラグランジュの方法 -- 場の量としての流体の密度:ρ,流速:u,体積力:k,応力:tを、~~小領域での運動方程式に翻訳して、場の量の運動方程式を得る。~~オイラーの方法。視点を固定して、その場所を通る流体の様子を見る立場。 - オイラー微分とラグランジュ微分 -- オイラー微分:普通の偏微分。空間成分を固定。∂/∂t -- ラグランジュ微分:速度場に乗った流体要素の運動を追いかけながら、その軌跡に沿って時間微分。~~(D/Dt)F(t,x(t)) = lim[Δt→0]{F(t+Δt,x(t+Δt))-F(t,x)}/Δt = (∂/∂t + u[i]∂[i])F(t,x)~~uは流体の速度場。 -- ニュートンの運動方程式は質点の運動を規定する運動方程式。~~流体要素をに着目して運動方程式を書けば、ニュートンの運動方程式に帰着できる。 - 連続の式 -- 流体要素の質量の増減は、流体要素表面からの出入りと等しいと考えれば、~~Dρ/Dt = ∂ρ/∂t + u[i]∂[i]ρ = -ρ∂[i]u[i]~~∂ρ/∂t + ∂[i](ρu[i]) = 0 - 連続体の運動方程式 -- 連続体中に任意に微小体積Ωをとるとその内部の運動量はP=∫[Ω]ρvdV~~Ωを固定した上で、この運動量が変化する要因は、運動量の流れによる変化と外力による変化がありうる。 -- 運動量の流れによる変化。運動量を持った粒子の移動による変化~~-∫[∂Ω]ρv[i]v[j]dS[j] -- 外力による変化。体積力と応力の和。~~∫[Ω](k[i]+∂[j]t[i,j])dV -- 運動方程式の積分形は、(∂/∂t)∫[Ω]ρv[i]dV = -∫[∂Ω](ρv[i]v[j])dS + ∫[Ω](k[i]+∂[j]t[i,j])dV ~~微分形では(∂/∂t)(ρv[i]) + ∂[j](ρv[i]v[j]) = k[i]+∂[j]t[i,j] -- 連続の式を使うと、左辺はラグランジュ微分 ρ(∂/∂t + v[j]∂[j])v = Dv/Dt~~ρDv[i]/Dt = k[i] + ∂[j]t[i,j] これは個々の体積要素に注目した運動方程式。 - 弾性体 -- 外力を加えていないときは一定の形を保つ。 -- 弱い外力に対しては線形に変形し、外力を除くと元に戻る。→弾性変形 -- 外力を強くしていくと、変形は非線形になり、さらに強くすると塑性変形となり、元に戻らなくなる。~~もっと強くすると破断する。 -- 固体を弾性変形に着目して見るときは弾性体と呼ぶ。 - 変形ベクトルと歪みテンソル -- 外力が加わっていないときに取った点Aが、微小な外力に対してA'に微小に移動したとき、~~その変位を変形ベクトルuで表現する。~~A(x)→A'(x+u(r,t)) -- この変形ベクトルは、弾性体の歪みを伴わない平行移動や回転の変位も含んでしまっている。~~隣接する点の情報を使って弾性体の歪みを表現する。 -- 隣接した二点A(x),B(x+δx)が、外力によってA'(x+u(x,t)),B'(x+δx+u(x+δx,t))に移動に移動したとする。~~外力無しの状態ではAB=δx、~~外力が加わると、A'B'={x+δx+u(x+δx,t)} - {x+u} = δx[i] + (∂[j]u[i])δx[j]~~|A'B'|^2 - |AB|^2 = |δx|^2 + 2δx[i](∂[j]u[i])δx[j] (uは微小量とみなし、uについて1次までとる。) -- |A'B'|^2 - |AB|^2は二次形式、∂[j]u[i]を対称成分、反対称成分に分けると、~~S[i,j] = (∂[j]u[i] + ∂[i]u[j])/2 は歪みテンソル。隣接二点間の変位の違いを表現している。~~r[i,j] = (∂[j]u[i] - ∂[i]u[j])/2 は捩れテンソル?隣接ニ点間の回転の違い。 - 体積の変化率 -- 変形前後の体積変化は、ヤコビアンを使ってδV'/δV = ∂(x+u)/∂(x) = 1+∂[i]u[i] = 1+div u~~(δV'-δV)/δV = div u は体積変化率。 - フックの法則 -- バネについての、f=kx。変位は外力に比例する。 -- 弾性体については、応力と歪みが線形になっている。(線形になっている領域を扱う。)~~t[i,j] = c[i,j,k,l]S[j,l]~~ c[i,j,k,l] :弾性テンソル。3^4個の成分。~~(i,j),(k,l)それぞれについて対称、(i,j)と(k,l)の入れ替えについて対称。→21個の独立成分 -- 対称性の高い等方的な材料の弾性テンソルは、座標回転について不変~~→c[i,j,k,l] = Aδ[i,j]δ[k,l]+Bδ[i,k]δ[j,l]+Cδ[i,l]δ[j,k] の形。~~c[i,j,k,l] = λδ[i,j]δ[k,l]+μ(δ[i,k]δ[j,l]+δ[i,l]δ[j,k]) 等方弾性体についてはパラメタは2つ→ラメの弾性定数 - フックの法則 -- &mimetex(t_{ij} = C_{ijkl}S_{k,l}); -- 等方的な弾性体については&mimetex(C_{ijkl} = \lambda \delta_{ij} \delta_{kl} + \mu (\delta_{ik}\delta_{jl}+\delta_{il} \delta_{jk}));~ &mimetex(t_{ij} = \lambda \delta_{ij}\partial_k u_k + 2\mu S_{ij}); - 等方弾性体の変形の方程式 -- つりあいの式 &mimetex(\frac{Du}{dt} = 0);~ &mimetex(S_{ij} = \frac{1}{2}(\partial_j u_i + \partial_i u_j));~ &mimetex(k_i + \partial_j t_{ij} = 0); ~ -- &mimetex(\partial_j t_{ij} = (\lambda + \mu)\partial_i \partial_j u_j + \mu \Delta u_i); - 境界条件 -- 方程式の解を決めるには境界条件が必要。 -- 固定端条件:表面に垂直な成分が0。&mimetex(u_i n_i = 0);; -- 自由端条件:表面に垂直な応力が0。&mimetex(t_{ij} n_j = 0);; -- 一定の外力を与える。:&mimetex(t_{ij}n_j = F_i); - 弾性変形のエネルギー -- 変分をとると応力がでてくるようにエネルギーの表式を作る。~ 歪みに対して線形な応力を考えているので、エネルギーは歪みに対する二次形式。~ 応力&mimetex(\partial_j t_{ij});が働いている物体を&mimetex(\delta u);だけ変形させるのに必要な力は、&mimetex(\delta u_i \partial_j t_{ij});~ 物体全体に渡って積分すると、&mimetex(\delta W = \int \delta u_i \partial_j t_{ij}dV);~ &mimetex(\delta W = \int \delta u_i t_{ij}dS_j + \int t_{ij} \partial_j \delta u_i dV);~ 表面項を落として、内部でのエネルギーを取り出せば、~ &mimetex(\delta W = \int t_{ij} \delta S_{ij} dV = \int C_{ijkl}S_{ij}S_{kl}dV);~ &mimetex(\epsilon_{el} = \frac{1}{2}C_{ijkl}S_{ij}S_{kl});